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求め、チェイン強度および水平移動量が許容値以下になるように適切なチェインを選定する1)。つぎに、アンカー点の水平力および鉛直力に基づいて、アンカーまたはシンカーの設計を行なう。アンカーのはちゅう(把駐)力はできるだけ現地試験に基づいて決めるのがよいが、試験ができない場合には、土木学会2)や港湾の施設の技術上の基準・同解説3)による算式を参考にすることができる。シンカーの設計は、水平抵抗力については受働土圧、また、鉛直抵抗力については自重に基づいて行なう。
チェインを用いないで、ワイヤーまたは繊維索などを用いる場合には、それらの変位復元力特性の試験結果に基づいて、水平力に対する水平変位と張力を求める。

 

2)ドルフィン・係留ゴム
この方法は、杭式またはジャケット式のドルフィンとこれに設置された係留ゴムによって浮体を係留するもので、上五島および白島の洋上石油備蓄基地施設の貯造船の係留に初めて用いられ、その後、オリアナ号、摩周丸、MM21の海上ターミナルなどの多くの浮体構造施設の係留に用いられている。この係留に用いられる係留ゴムは、超大型船の係留施設に用いられる定反力型ゴム防舷材と同種のものであるが、浮体構造物が波と風の作用を受けて動揺することから、以下の点に留意して設計に用いる性能を評価する3)。?@製造公差、?A経年変化、?B静的クリープ特性、?C動的クリープ特性、?D繰返し載荷特性、?E温度依存性、?F速度依存性。

 

3)TLPの係留
TLPはコラムとロワーハルからなる浮体の上部にデッキを搭載し、コラムの下部から初期張力を掛けた係留ワイヤを海底にアンカーする形式の石油生産構造物である。1984年に北海のHutton(ハットン)油田4), 5)(-148m)に鋼製TLPが設置された。その後、メキシコ湾で、1989年にJolliet(ジョリー)油田(-536m)6), および1994年にAuger(アウガー)油田7), 8)(-868m)に鋼製TLPが設置された。また、北海では、1992年にSnorre(スノール)油田9)(-310m)に鋼製TLPが、1995年にHeidrun(ヘイドラン)10), 11)油田(-350m)にコンクリート製TLPが設置されている。
浮体の設計は有限要素法によって行なうが、静的解析と動的解析が行なわれる。静的解析は静水中での自重、浮力、活荷重および係留ロープの張力を荷重として行なう。動的解析は曳航中および設置後の風荷重、流れによる荷重、波浪荷重および温度荷重などの種々の組合わせを考慮して行ない動揺量および動揺に伴って生じる慣性力などを求める。つぎにこれらの荷重を用いてNASTRANなどによる局部部材応力の解析を行なっている4)5)。
係留ワイヤ(テンドンまたはテザーともいう)の張カは、浮力から自重およびライザー張力を差し引いたものに等しい。テンドンは海底に杭で固定されたテンプレートまたは重力式アンカーに係留される。重力式アンカーはいわゆるサクションアンカーであるが、スノール油田およびヘイドラン油田のTLPに用いられている。図-3.2.15はヘイドラン油田の重力式アンカーである。アンカーは4箇所あって、それぞれ9mの直径の19のセルから構成される。1個のアンカーの気中重量は21,000トン、水中重量は約12,500トンである。図-3.2.16重力式アンカーの他の事例である。

 

 

 

 

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